日本の法律上、基本的にペットの扱いというのは物と同様である。民法上は「物とは有体物である」という規定から導き出されるし、刑法上もそれに従って器物損壊罪の対象でしかない。だからどんなに家族として愛情を注いでいようと財産を相続させることは出来ないし、人間と同等の権利を求めて危害を加えた他人に罰則を与えることも出来ない。一方で個別に立法された動物愛護管理法*1では愛護動物につきその傷害や殺害について罰則が設けられている。
愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。-第44条
愛護動物を遺棄した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。-同3項
そして対象となる愛護動物とは何かというのも明記されているのだが知られていないかもしれない。
「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。一 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫 類に属するもの
最近飼っているカワウソの虐待で送検されたインスタグラマーや就活のストレスから子猫を殺した男のニュースがいろいろ目についたので、あー、と思いながら絶対嫌な気持ちになると思ったが目を通してしまった。
子供が死ぬ事件もほんとに嫌なのだが、自分で飼ってるペットを虐待する人間の話も見ると気持ち下がるのである。痛ましさややるせなさやいろいろである、あと自分は怒りを起こすよりかなしさの押し寄せのほうが大きい。
孤独の解消であったり癒やしであったりペットの効用はさまざまで、有史以来人間は家畜的利用以前から動物を手元に置いて云々*2と長い話はしないことにするが、飼育して愛玩することをしてきた。
犬猫は言うに及ばず爬虫類や鳥類もそうだし、一応法に触れない範囲でやってくれている分には個人の趣味ではある。ただ物珍しさがもてはやされるようになった最近では無理な欲求のために上記カワウソのような動物を飼う人間も目に入るようになった。
ペットに対する意識はいろいろあるとはいえ、生活を共にして世話をするうえは責任が存在しているはずなのだ。野生下ではない人間の住環境に同居させてる限りは愛玩という目的もあって、人間の手前勝手な願望にお付き合いいただいている状態と言ってもいい。
めんどくささもあるのは承知しながらも、それも含めての飼育の責任だろうと個人的に思うのだがペットというとどこかかわいさに主眼を置いたモノ扱いで意識が留守になる*3人間も少なくないような。人間のテキトーさの為せることといえばそれまでかもしれないが。
太古の昔から人間と暮らすように進化してきた犬や猫であれば飼い方も付き合い方も楽と言えるが*4、それ以外の動物で懐かないとか手に余るという理由で飼育放棄されたり虐待されるのはもう人間の罪でしかない*5。
「かわいい」というのはある種罠で、人間そのベールで盲目になってしまうと特に動物が多種多様な生態を持っていることを忘れるか全然想像しなくなるようだ。犬猫ベースのペット観が先入見としてその位置を占めてることも理由にありそうで、エサをやって世話してやれば手懐けられてかわいく懐いてくれる、と都合よく思いがちなのだと思う。
専門職の動物園や水族館でさえ飼育方法が詳細不明な中で試行錯誤していたりするのに、何も知らない一般人が珍奇な動物を飼おうと思い立ってもどうなるかは想像に難くない(はずだと思いたい)し、真面目に手をかけて向き合える人はほとんどいない*6
自分も猫が好きだしSNS上でかわいい動物の写真や動画を見るのも好きだ。あいにくペットは今まで持ったことがないので実際の良さや苦労のほどは体感したことがない。もし飼うことがあれば準備や勉強にすごく時間を使うだろうし、暮らしていくうえで細心気をつけていくことになるだろう。愛も注げばお金をかけることに躊躇しないだろうし。それが普通だとは思うけど。
だからこそ顕示欲や承認欲求が先行した飼育、弱いものとして最終的に虐待されるペットがいるのはかなしい。他にも販売の問題とかブリーダーの問題とか飼育放棄や殺処分の件もいろいろあるのは了解しててあまり知らないことも多い。
人間知らずにいろんな不都合のコストを誰かに転嫁しているものだと大きなことを言うわけではないが自分も見えてない社会悪や内包した矛盾の共有者であるような気もするし、なんとなくそういうのをふんわり背負ったうえで”人間社会”というのをやってるんだなというのも忘れないようにしたい。
あと飼ってる動物を虐げてる人間はもちろんすべからく裁かれてくれ。